世界のインプラント事情
2009年ボストンAAP(米国歯周病学会)に出展していた世界的なインプラントメーカー

ボストン全景

AAP(米国歯周病学会)というのはアメリカで一番歴史のある学会で、私は会員になって10年が経過しました。毎年秋にある年次大会に出席しています。アメリカにはAOというインプラントの学会もあり、私も会員ですが、規模的にも内容的にもAAPが世界一のインプラント学会です。

アメリカではインプラントは主に歯周病専門医が手術しています。インプラント治療は歯周病治療の延長に位置づけられているからです。インプラント治療が主体の吉岡歯科医院でも、大学の歯周病科に5年在籍したベテラン歯周病医の今村先生と神原先生がいるのも、そういう理由からです。

AAPに出展されているインプラントはFDA(米食品医薬品局)が認可しており、安全であり、世界に通用するインプラントであると考えられてます。

ちなみに日本製のインプラントはありませんでしたが、現在ジーシーインプラントが世界デビューに準備中です。以下の写真は2009年のボストンのAAPの企業展示の様子です。上の写真はホテルの窓から見たボストン全景です。

以下の写真はAAPに出品しているインプラントメーカーのブースで、世界規模の市場に出回っているインプラントシステムです。

ボストンコンベンションセンターの前で

2009年AAP(アメリカ歯周病学会)年次大会会場のボストンコンベンションセンター

 

2009AAPゼネラルセッション会場

ゼネラルセッション会場の様子です。

 

2009AAPエキシビジョン会場

協賛企業の展示ブースです。

 

2009年AAPスポンサー

2009年AAP(アメリカ歯周病学会)年次大会のスポンサー一覧です。

左端のプラチナスポンサーは$50,000以上の協賛金を出しています。コルゲートはサンスターと同様は磨き粉などのオーラルケア製品の大手企業です。日本のサンスターがプラチナスポンサーなのは名誉な話ですが、歯磨き製品の他にリコンビナントFGFなどの製造にも乗り出していくようです。ネオスとノーベルバイオケア、ストローマンはインプラントメーカーです。次のゴールドポンサーは$25,000以上の協賛金を出しています。アストラ、バイオメット3iはインプラントメーカーとして、ジョンソンアンドジョンソンとP&Gはオーラルケア製品メーカーとして、協賛しています。全体で見るとAAP(アメリカ歯周病学会)を支える企業の半数以上がインプラントメーカーとインプラント関連製品メーカーです。これは、ゼネラルセッションの内容でも、歯周病学会のメインテーマはインプラントなんです!!!!!!。以下、気になったブースの紹介をしながら世界のインプラントの紹介をします。

 

Sybron Implant Solutions  (サイブロン インプラント ソルーション)

      エンドポアインプラントロゴ

日本ではマイナーなインプラントメーカーをトップに持ってきたのは、私自身すごく想いが強いインプラントを扱っているメーカーだからです。このメーカーののエンドポアインプラントはとにかく、患者様に対する「最小限のダメージ」で開発された最小のインプラントで、真に患者様主体のインプラント治療を提案したメーカーです。エビデンスとしては2000年と2001年の論文で3年間にわたるインプラント成功率100%の発表でインプラント業界に激震が走りました。2003年のAAPのゼネラルセッションではインプラント界の重鎮デニスターナーが「未来のインプラントデザイン」との項目でエンドポアボディーとノーベルパーフェクトプラットホームを持つインプラントを発表したくらいセンセーショナルなインプラントでした。
マイナーと書きましたが、アメリカやカナダではマイナーではありません。もともとイノバ社単独でもAAPでも毎年大きなブースを構えたけっこうメジャーなインプラントメーカーでした。

 

サイブロンインプラントソリューション

現在歯科業界は吸収合併が頻繁に行われ、イノバ社は現在サイブロンデンタルという世界第2位の巨大歯科グループの一員となりました。上の写真は2009年9月のAAPのサイブロンデンタルの企業ブースですがノーベルバイオケア、ストローマン、バイオメット3iと同程度の展示ブースを毎回持っています。このブース展示のメインはアストラインプラントとITIインプラントが合体したようなインプランです。

エンドポア

このインプラントはカナダの国家プロジェクトで開発された、整形外科領域での人工股関節の表面構造を応用したインプラントです。わずか5ミリの骨量で安定した結果を出すことが出来るという現在最も小さいインプラントで、吉岡歯科医院では骨が少ないケースでは積極的に使用しているインプラントです。2000 年と2001年の論文で少ない骨量で100パーセントの成功率を達成している優秀なインプラントです。このインプラントの開発メンバーであるトロント大学のデポーター教授本人に直接インプラントケースを見せてもらい、その実績に驚嘆し、10年前から吉岡歯科医院で採用しています 。  

 エンドポアインプラント2 

上の写真がエンドポアインプラントのポスターですが、天然歯の半分の歯根長のインプラントで歯を支えるというコンセプトです。
インプラントの表面は股関節インプラントや膝間接インプラントに用いられるビーズ状のチタンのつぶつぶが溶着されています。

 

ピットイージー

ピットイージーインプラントとアナトミックインプラントはドイツオラトロニクス社の製品でしたが、現在アメリカではイノバが販売しています。当然サイブロンデンタルのメンバーです。このピットイージーインプラントはノーベルバイオケア社が現在最も力を入れている新製品のノーベルアクティブインプラントに形状が酷似しています。

ピットイージーインプラント

 

アナトミック

この形状のインプラントは他にはないオリジナリティーが有ります。日本国内ではこんな形状のインプラントは見たこと有りません。

アナトミックインプラント

バイオメット社3iインプラント 

3iインプラントブース 3iインプラント

 

バイオメット社は整形外科領域では最大大手企業の一つです。3iインプラントは、現在では実質世界第3位のインプラントメーカーです。そもそもはブローネマルクインプラントの成功率を高め、臨床的に使いやすくしたインプラントシステムで、1987年にDrラザーラが開発商品化したインプラントです。1965年に発売されたノーベルファルマ社(現ノーベルバイオケア社)のブローネマルクインプラントは、インプラント表面が機械研磨表面であまり骨と結合しない性能の低いインプラントでした。上顎臼歯部でのインプラントのオッセオインテグレーション成功率は65%程度でした。3iインプラントは、このブローネマルクインプラントの骨とくっつかない表面性状を酸で処理をして骨と強固に結合する「オッセオタイト表面」に改良しました。このインプラントの表面性状は現在のほとんどメーカーのインプラントメーカーのインプラントサーフェースの基礎になっています。3iインプラントは創立者のDrラザーラが株を手放し、現在は大手バイオメットの傘下に入りました。

臨床的には現在インプラントの主流になっている骨と早期に結合しやすいラフサーフェースと呼ばれるオッセオタイト表面を1996年に発売し、全米でブレークしてから現在ではアメリカでは2位、イアタリア、スペインでは販売1位のインプラントです。このインプラントは骨移植などの高度な手術を得意とするドクターや大学関係者に好まれる傾向があります。

3iインプラントはその後プラットフォームスイッチングという概念をインプラント業界に広めました。3iインプラントはハイブリットやナノタイトなど表面構造と形状とコネクションシステムが多数有り複雑なインプラントシステムですが製品名称としては下記の種類が有ります。

ナノタイトインプラント オッセオタイトインプラント プリベールインプラント サーティンインプラント XPインプラント

3iインプラントはアメリカにおいては、ポピュラーな使いやすいインプラントのイメージですが、日本においてはジアズというマニアック集団(ちなみに私も会員です)が使用しているため、マニアックなスペシャリストが使用するインプラントというイメージが定着してしまい、少々販売面で苦戦しています。現実的にはイージーなインプラントでおすすめです。

2009年6月、3iインプラントの招待でニューヨーク大学の卒後研修プログラムを受けてきました。
アメリカはノーベルと互角以上の評価を得ているインプラントブランドです。

 

デンツプライ社(アンキロスインプラント・ザイブインプラント)  

デンツプライインプラントブース

デンツプライは現在世界第1位の歯科商社でインプラントメーカーとしては下記のアンキロスインプラント、ザイブインプラント、フリアットインプラントを製造しています。

アンキロスインプラントロゴ

  アンキロス

アンキロスインプラント吉岡歯科医院で最近積極的に使用している インプラントです。アンキロスインプラントの一番の特徴はアバットメントの接合様式であるモースジョイントとプラットフォームシフト効果が優れており、長期に渡る経過においてインプラント頚部の骨が吸収しにくいところにあります。この現象とシステムを3iインプラント社ではプラットフォームスイッイングと呼んでおり 、現在全てのインプラントメーカーがこの原理を応用する製品を開発しています。アンキロスインプラントはその最右翼で20年前からこの形状です。全体的な形態もノーベルバイオケアの新製品であるノーベルアクティブインプラントに酷似しており時代の最先端を20年前からクリアしていたという優れものインプラントです。ジルコニアアバットメントを最も早く製品化したのもこのアンキロスインプラントです。

      アンキロスCX           アンキロスインプラント3      

左上がアンキロスインプラントの新製品で回転方向を規制する溝が加わりました。このインプラントは全ての面で非常に優れたインプラントですが、欠点としてはインプラント先端にセルフカッティング能力が無いことと、50ニュートン以上の力で埋入しようとすると安全装置が働いてインプラント本体からマウントが外れてしまう為、即時負荷には少々不利な面があります。アンキロスインプラントのメリットはカバースクリューがインプラント本体とスリップジョイントで接合されている為、ブローネマルクインプラントタイプのアウターヘックスインプラントで2次オペ時にしばしば経験するカバースクリュー周囲の骨が吸収しているということがほとんどありません。骨移植、骨造成と同時埋入インプラント手術をする場合にはベストなインプラントです。

 

ザイブインプラント

  ザイブ

ザイブインプラントはドイツ国内では非常に評価の高いのインプラントです。補綴パーツの種類も豊富で、古くからジルコニアなどの現在流行の素材を用いており、最先端をいくインプラントです。また、太さも多数用意されており、ケースを選ばないインプラントとしての評価も高いです。

 

        ザイブインプラント1             ザイブインプラント2

 

 

フリアットインプラント

  フリアット2    

現在は無くなったインプラントシステムですが、30年程度前、日本国内でオッセオインテグレーションタイプのインプラントとして日本国内でブームを呼んだインプラントとしてブローネマルクインプタントとITIインプラントとIMZインプラントがありました。現在のインプラントシステムはネジ状のインプラントが主流ですが、IMZインプラントはネジ形状ではなくシリンダー形状といい試験管のような形をしたインプラントでした。IMZインプラントがモデルチェンジしたのがフリアットインプラントです。フリアットインプラントは先に行く程段階的に細くなり、歯根の形態を模倣したインプラントで、IMZインプラントからの乗り換えで流行りましたが、現在はアンキロスインプラントにスイッチされつつあるようです。現在インプラント埋入位置の考え方は前歯部においては、もともと歯が埋まっていた位置と同じ場所ではなく、内側に埋めることが主流ですが、当時は歯を抜いた穴に、スポッとインプラントをはめ込むような考え方でした。20年でインプラントに対する考え方や、インプラント治療のプロトコルは変貌を遂げました。   

            インプラントイメージ             フリアットインプラント   

上記の模式図がフリアットインプラントのコンセプトを物語っています。このインプラントは発売当初はトラブルが多いインプラントとしても有名でした。骨と結合が良くないインプラントとの評判でしたが、その後改良されましたが汚名の完全な払拭はできないインプラントでした。現在でも販売している現役のインプラントですが、現時点においては過去のインプラントシステムとして扱われています。 


アストラ社 アストラインプラント 

 アストラインプラントブース   

オッセオスピードの広告

 

スエーデンではポストブローネマルクインプラントです。インターナルコネクションの草分けです。日本ではOSIの原先生、伊藤先生、寺西先生の門下生が使用しています。また、このインプラントは以前はササキから購入できたので、購入経路が直販ではまずい大学病院や公的病院の口腔外科での使用から日本では広まった模様です。日本においては、ノーベルバイオケアインプラント、ストローマンインプラント、ジンマーインプラントにつづく第4位の販売実績のインプラントです。日本国内のインプラントシェアでは7.5%あり、昔の京セラインプラント、現在のJMMインプラントと同程度のシェアがあるのです。 3iインプラントやジーシーインプラントよりシェアがあるのは ブローネマルクインプラントからの乗り換えが多いのも要因かと考えます。コニカルシールやマイクロスレッドなど時代のブームを牽引したインプラントでもあります。

バイコン社(バイコンインプラント) 

バイコンインプラントブース

そもそもはストライカーが開発したインプラントで1985年から規格を変えていない老舗インプラントです。手榴弾に似た樽状のへんな形のインプラントと思う人もいるかもしれませんが、薄くて長いフィン形状(厳密に言うとネジ構造のインプラントでは無い)のインプラントは今後の主流になる予感がします。日本で最初にできたインプラントセンターの使用しているインプラントもブローネマルクインプラントからアストラインプラント、現在はバイコンインプラントにインプラントシステムを変更しています。バイコンインプラントは海外の学会でも大きなブースを構えておりなかなか盛況です。以前ニューオリンズでのAAPでは地元のケーブルテレビの1CHを朝から晩までバイコンインプラントのプロモートに使っており、さすがアメリカ発のインプラントメーカーとびっくりしました。この樽のような形状は愛嬌があります。ここのボストンのインプラントセンターには平山先生という愛知県出身の先生がいて、先日はボストンのバイコンインプラントセンターとインターネット回線で繋ぎ、インプラント手術のライブオペを見せてもらいました。平山先生は現在ではバイコンインプラントジャパンの社長です。

                バイコンインプラント

バイコンインプラントの大きな特徴の一つにインプラント本体とアバットメント(土台)の接合がネジ止めでなく、機械的なモーステーパーによる勘合力であるということです。ネジではないのでアバットメントはインプラント本体に小さな金槌で打ち込まれて固定されます。内部にバクテリアが入る隙間は無くプラットフォームスイッチングと相まって骨の安定を武器にしています。

 


カムログ社(カムログインプラント)

   カムログインプラント      カムログインプランント2 

キルシュが作ったドイツの名門インプラントです。ノーベルバイオケア社のリプレイスがこの3つのカム構造を応用したといわれています。ドイツではメジャーなインプラントですが2009BostonAAPでは展示しておらず、写真は2008年のシアトルAAPの物です。

 


ジンマー社(スクリューベントインプラント・スプラインインプラント)

 ジンマーデンタル(スクリューベントインプラントとカルシテックインプラントのブース)

ジンマー社というのは整形外科領域では巨大メーカーで股関節インプラントなども扱っています。歯科インプラントメーカーとしてもかつてはコアベントインプラントからの長い歴史がある老舗インプラントメーカーです。コアベントインプラント、スクリューベントインプラント、センタープラスなどなど名前を思い出せないくらい吸収合併を毎年繰り返し、現在では世界第4位の巨大インプラントメーカーです。日本では同社の傘下のスプラインインプラントが大ブームです。

以下の写真は2005年のAAPの時にジンマーのインプラント工場に招待された時の写真です。 

                ジンマーインプラントの工場入り口

アメリカサンディエゴ近郊にあるジンマーのインプラント工場の入り口

                ジンマーインプラント工場で伊藤先生と

盟友伊藤先生と

                インプラント工場内部1

ジンマーインプラント工場内部(インプラントを作っているというより機械部品の工場みたいでした)

       インプラント検査行程          スプラインインプラント1スプラインインプラント2

 インプラント検査行程

ジンマーはそもそも大手医科のメーカーですが、どんどん会社を吸収して大きくなった会社です、この会社が扱っているスクリューベントインプラントはそもそもはコアベントインプラントという古くからあるアメリカのインプラントメーカーの製品です。カルシテックインプラントも傘下に入れ今やノーベルバイオケアインプラント、ストローマンインプラント、3Iインプラント、デンツプライインプラントに次ぐ大手インプラントメーカーになりました。ジンマーのインプラント工場を視察に行きましたが、かつては別会社のカルシテックインプラントとスクリューベントインプラントが同一の生産ラインで製造されており、MP-1の表面処理が同じテーブルで同一の作業工程で行われていました。日本ではスプラインインプラントというチタンインプラントならぬHA(ハイドロキシアパタイト)インプラントが大人気インプラントです。このHAインプラントの骨との結合はオッセオインテグレーションではなく、バイオインテグレーションと呼ばれています。骨質の悪い日本人にとっては神様のインプラントと崇める人もいますが、かつてあれだけ人気があったHAインプラントが世界のインプラント市場から撤退した原因を作ったのは、現カルシテックインプラント社が製造した HAインプラントの長期予後が悪かった為という歴史的事実を日本国民以外のインプラントロジストは現在でも覚えている為です。現在でもHAインプラントを主力インプラントにしているインプラントメーカーはカルシテックインプラントとバイコンインプラントだけです。3iインプラントのナノタイトインプラントもHA(ハイドロキシアパタイト)が骨を寄せやすい性質を利用したインプラントですが、 3iインプラント表面のHAは早期に吸収するのでHAインプラントではなくオッセオインテグレーションをおこすチタンインプラントです。

スクリューベントはインターナルコネクションを早くから製品化したメーカーですが、発売当初インプラントフィクスチャー自体が破折するというトラブルが頻発しました。現在はインプラント体の材質を純チタンからチタン合金に変更することによりこの問題は解決したようです。インターナルコネクションのインプラントはネジが緩みやすいというアウターヘックスコネクションの欠点を克服したかのように見えますが、リプレイスインプラントやアストラインプラントのようにインプラント本体が破折するというリスクが高くなります。また、ジンマーインプラントにはストローマンインプラントそっくりのスイスプラスインプラントというインプラントシステムがあります。3iインプラントもブローネマルクインプラントをコピーしたのですが、一流品のイメージがあり、ストローマンインプラントをコピーしたスイスプラスインプラントが二流品のイネージなのは私の偏見のせいでしょうか?日本ではジンマーに合併される以前の販売ルートで現在も販売されています。カルシテックインプラントは白鳳、スクリューベントインプラントとスイスプラスインプラントはインプラテックスが販売しています。

 

イムテック社(イムテックインプラント)  

イムテックインプラント    MDIイムテックミニインプラント

 

現在このメーカーの主力インプラントは直径1.8ミリのミニインプラントで簡易インプラントとして、骨幅がない場合や力がかからないような義歯の維持のみの利用がメインです。前回と今回のAAPのスチュアートフロムの講演では顎堤の幅の無い下顎前歯部に応用して、良い結果をだしているとのことでした。イムテックインプラントと同様の細いインプラントとしてはデンタータスインプラントもブースをだしていました。イムテックインプラントがパーマネントな使用を基本としていますが、このデンタータスインプラントシステムはレールを用いたテンポラリーインプラントシステムでした。私も3年ほど前AAPで購入して使用してみましたが、下顎でも大臼歯部や小臼歯部は1ヶ月で機能しなくなります。細いミニインプラントは下顎前歯部のみ、比較的安定しているインプラントと考えた方がよさそうです。(左上写真は2008年AAPのものです。)

 

 

ストローマンインプラント

ストローマンインプラントのブース

ストローマンインプラントは世界第2位のシェアを誇るインプラントメーカーです。現在はストローマンインプラントと読んでいますが20年前はITIインプラントと読んでいました。私はこのITIインプラントからインプラントを始めました。元々は1回法インプラントとしてデビューしましたが、現在ではすぐ下のイラストのようにボーンレベルインプラントの2回法インプラントを主力商品にするようです。日本国内においては未だ1回法用のインプラントヘッドの直径が4.8ミリもある旧タイプのインプラントのみの発売(細いタイプもあるが、同様なラッパ状形態のインプラント)で、近年、ITIインプラント離れが進んでいると聞いています。日本において昔からのITIインプラント(現ストローマンインプラント)のセミナー講師達までが次々とストローマンインプラントを離れ、他のインプラントに乗り換えているのです。ストローマンインプラントが他のインプラントメーカーに乗り換えられてしまう理由として、現在国内販売しているインプラントが前歯部の審美領域に使用が難しいインプラントだからというのが一番大きな理由のようです。がんばれ!ストローマンインプラント

                      ストローマンインプラントロゴ

上のインプラントは海外では主流となったボーンレベルのアクティブと呼ばれるインプラントですが、賞味期間の短さとバカ高い価格で悪評判のインプラントです。このインプラントは日本での発売はまだですが、薬事承認がとれてもどのくらい売れるかは謎です。下はストローマンボーンレベルインプラントの構造図ですがアンキロスインプラントそっくりです。

ストローマンインプラントITIインプラント

 

キーストーン社

プリマインプラント・ライフコアインプラント  

キーストンデンタル(プリマインプラントとライフコアインプラントのブース)

キーストン社の製品ですが現在日本ではライフコアインプラントを白水貿易が輸入しています。が、アメリカでは新製品のプリマインプラントの展示しかありませんでした。ライフコアインプラントは消え行く宿命でしょうか?ライフコアインプラントの特徴は他のインプラントメーカーのいいところを寄せ集めたようなインプラントシステムです。ブローネマルクインプラントや3iインプラントのアバットメントは互換性があるようです。

キーストンデンタルのブース

                プリマインプラントのみ展示してありました


バイオホリズン社

マエストロインプラント  

実は現在アメリカで最も勢いのあるインプラントメーカーはここです。でも新参者のインプラントメーカーではなく、老舗インプラントメーカーです。昔からなじみのインプラントメーカーでしたが、ここ急成長の注目インプラントとなりました。企業主催の講演でもピコスとマイロンネービンスをとりこみ怖い物無しという勢いです。普通のインプラントはインプラント本体にアバットメントを連結後荷重を掛けると、インプラント頚部の骨が1.5ミリほど皿状に吸収します。現在このインプラント頚部の骨吸収を防ぐ手だてとしてプラットフォームスイッチングと呼ばれる方法があります。3iインプラント、アンキロスインプラント、アストラインプラント、バイコンインプラントが応用している方法ですが、インプラント本体の頚部直径より、細いネックのアバットメントを装着することにより、安定した結合組織のバンドを作り、インプラント頚部付近の骨吸収を防ぐというシステムです。しかしながら、この方法は通常サイズのアバットメントを使用する場合にはそれ以上に太い頚部を持ったインプラントを使用する必要があり、骨幅の狭い前歯部の使用には限界があります。そこで、通常サイズのインプラントを使用し、細いサイズのアバットメントを使用すると今度は強度的にリスクが高くなってしまうのです。

このインプラントは骨と良くくっつくレーザーエッチングされたインプラント表面構造により、プラットフォームスイッチングをしなくてもインプラント頚部の骨が落ちません。これが本当に長期に安定するのなら、まさに新時代のインプラントです。日本ではこのバイオホリズン社のインプラントはカイマンデンタルが扱っています。

 バイオホライズンのブース      

                 マエストロインプラント

  

ノーベルバイオケア社 

世界最大のインプラントメーカーでジョンソン&ジョンソンに買収されるという噂がありましたが、どうなったのでしょうか?

現代インプラントの基礎と言われるブローネマルクインプラントを製造販売したのはこのメーカーです。前CEOのパメラの強引な手法が災いし、近年インプラント学会がインプラントメーカー主導によりインプラント業界全体を支配する傾向が強すぎるという悪い評判の火種はこのインプラントメーカーです。インプラント業界のマイクロソフトです。ただ、新時代を作るという点ではぴか1で、ノバムシステムやノーベルダイレクトの様に完成度が低いインプラントシステムを販売し、事実上撤退しているインプラントシステムも多々あります。最近タイユナイト表面がインプラント周囲炎を引き起こしやすい、とか、ノーベルガイドによる即時補綴は15パーセントはうまくいかない、などインプラント業界のトップ企業には似つかわしくない話題が多いメーカーです。ノーベルガイドはシンプラントの特許を侵害していると訴訟中でもあります。

ノーベルバイオケアのブース

商品としては、ブローネマルクインプラント リプレイスインプラント ノーベルダイレクトインプラントがありましたが、
数年前にスピーディーインプラント グルービーインプラント ショーティーインプラントが加わり現在のメーカー一押しはノーベルアクティブインプラントです。このメーカーが作る、他のメーカーには無い特殊なインプラントシステムとしてザイゴマインプラントと呼ばれる長さが50ミリ程度ある頬骨に即時負荷をかけるタイプのインプラントもあります。

    ノーベルアクティブインプラント            ノーベルアクティブインプラント    ノーベルバイオケアインプラント一覧 

左上と真ん中上の写真はイスラエルで開発されたノーベルアクティブです。まだ、長期経過の論文は出ていませんが、現代のインプラントのトレンドを全てつぎ込んだようなインプラントです。70ニュートンという高トルクで埋入します。右上の写真はリプレイスインプラントですがステリオスインプラントのボディーにカムログインプラントのアバットメントという良いところは全ていただきのインプラントメーカーです。現在では頚部までフルタイユナイトとマイクログルーブを付与したマイナーチェンジ版を主力商品として展示しています。よそのメーカーのインプラントの良いところを利用することは悪いことではありませんが、反面ブローネマルクシステムの歴史と実績を強調するのは少々卑怯なような気もします。今年のAAPにおいてはブローネマルクインプラントの展示はありませんでした。

現在では泣く子も黙るノーベルバイオケア社ですが昔はノーベルファルマ社と言っていました。このころは骨との結合の悪いインプラントで、日本ではインプラントのデリバリーシステムもなっていない、常時欠品だらけのインプラントメーカーでした。このノーベルファルマ社のインプランターDEC100とトルクコントローラーがある歯科医院は老舗のインプラントロジストです。なんだかんだといっても世界最大シェアを誇る巨大インプラントメーカーで無視することはできません。早く日本でもノーベルアクティブインプラントを日本で発売して欲しいです。

ノーベルアクティブインプラントの構造    新型のノーベルフォルテ

今回の展示はノーベルアクティブとプロセラがメインでした。

SPIインプラント

日本ではモリタが輸入販売しているインプラントです。最強のインプラントと鳴り物入りの発売でした、残念ながら最近ではあまり人気はないようです。

SPIインプラントブース

ここから下は少しマイナーな展示に目を向けてみます。

neoss

ネオスインプラントブース

neossインプラントは2000年スタートの新しいインプラントメーカーで現在日本では販売されていません。イギリスに本社をおき、BMP2などの販売を手がけるメドトロニック社から資本提供を得ています。現在ではオーストラリア、オーストリア、ドイツ、イタリア、スウェーデン、ニュージーランド、アメリカ、デンマーク、オランダ、ポーランド、スイスで、販売されており急成長のメーカーです。今年のAAPのプラチナスポンサーでもあります。

BTI

BTIインプラントブース

アメリカのインプラントメーカーですが、下の図のように同じ長さと頚部直径のインプラントでもネジ形状を変化させた複数のインプラントがあり興味を引かれます。

BTIインプラント一覧

Blue Sky Bio

ブルースカイバイオインプラント

このメーカーのラインナップはストローマンインプラントとライフコアインプラントとジンマースクリューベントインプラントと互換性のあるインプラントを製造しているとのことで、コピーインプラントメーカーなんだと思います。4本以上購入すると無料の外科キットがプレゼントされるなど、コピーメーカーの王道を行っています。

 

MEGAGEN

メガジェンインプラント

 

メガジェンインプラント一覧

このインプラントは韓国製です。もうずいぶん前からAAPにも展示しており、世界に向けて販売しています。韓国のインプラントが世界で販売されているのに対し、日本のインプラントは世界では発売していません。唯一GCが海外での発売を模索していますが、ここAAPにおいては企業の展示ブースすらありません。日本の薬事行政が関係していることは間違いありませんが、ひどく寂しい思いをしています。

OSSTEM

OSSTEMインプラント

このメーカーも韓国製で、新宿に日本のオフィスもあります。

MIS

MISインプラント

ここのインプラントはノーベルバイオケアのノーベルアクティブに似ており、イスラエルを感じます。

southern implants

サウザンインプラントブース

ここのメーカーのインプラントで苺の形をしたインプラントが面白かったです。

osteohealth

オステオヘルスブース

インプラントの発展はこのメーカーのBio-Oss、Bio-Gide、GEM21Sなどが主力商品です。これらの材料はインプラントを埋める骨が無い場合に骨を作る材料です。Bio-Ossの歴史と実績は現代のインプラント治療には欠くべきことができない製品となりました。

OSTEOGENICS

オステオジェニックブース1オステオジェニックブース2

非吸収性メンブレンで一番有名なのはゴアテックスですが、本年は出店していませんでした。ゴアテックスとならんで有名な非吸収性メンブレンとして有名なのがここのCYTOPLASTです。ポアサイズが小さく粘膜で被覆できなくても感染しないのが売りです。

 

ORAPHARMA

オラファルマブース

吸収性メンブレンとして6ヶ月以上の安定を誇る製品としてOSSIXが有名で3iから販売されていました。その後、原材料を牛から豚に変更し名称もOSSIX PLUSと変更になりました。

渋谷教授と

渋谷教授と2ショット

私の出身大学は岐阜歯科大学で現在の朝日大学です。私は母校の歯周病講座の非常勤講師をしていますが、BOSSは渋谷教授です。母校のポスターセッションの前で撮影しました。

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